世界最優秀ソムリエコンクール東京大会決勝 [2013年3月29日]

私自身のブログを立ち上げるにあたり、記念すべき初投稿として、2013年3月29日の世界ソムリエコンクール東京大会決勝戦の観戦レポートを、改めて掲載します。これは当時(確か翌日!)フェイスブックの「NOTE」に投稿したものです。文中の時間軸は、その当時のものとしてお読み下さい。

世界ソムリエコンクールは3年に一度世界各地で開催されています。日本が誇る田崎慎也さんが世界チャンピオンとなったのが1995年の東京大会。それ以来、18年ぶりに東京で開催されました。場所は有楽町の国際フォーラムでした。

僭越ながらいろいろと申し上げてしまうことをお許しいただきたく思います。またあまり良いカメラではなく席も後方になってしまったため、写真は画質が悪くお見苦しいこともお許しください。そして文中に記憶違いの部分もあるかもしれません。

さて、いよいよ決勝戦が開幕します…。

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まずは決勝開始直前に幕前でファイナリストが発表されました。ベルギーのアリスティド・スピース選手、カナダのヴェロニク・リヴェスト選手、そしてスイスのパオロ・バッソ選手の3人でした。バッソさんは前回チリ大会に続いての決勝進出。そしてなんといってもリヴェストさんは女性初のファイナリストです!

 

いざ、決勝が始まり幕が開けると、会場からどよめきが。こんなすごいセットだったのです!

 

決勝はなんと7つもの課題で行われました。田崎さんのときの東京大会から比べていくつ課題が増えたんでしょうか?

まず最初はカウンターに座る3人の紳士たちに異なるタイプのシャンパーニュをグラスでサービスするという課題でした。選手からみて右手(観客席からは左)のお客様はミネラル感のあるもの(もっと細かい指定があったように思いますが失念w)、真ん中のお客様は果実味のしっかりしたもの、左手のお客様はマッシュルームやコーヒーの香りのあるもの、というご指定でした。

シャンパーニュは氷水の入ったソー(クーラー)にモエ&シャンドンのヴィンテージものが3種類、2003年、2002年、1995年が用意されていました。どの選手も右手のお客様には2002年、真ん中のお客様には2003年、左手のお客様には1995年をサービスしていました。

この審査は誰に何をお注ぎするかは決勝に進む選手なら誰にもわかるはずで、どういう順番で、どのようにサービスするかが鍵だったように思います。課題の内容を選手に伝えるときには右手のお客様から順に伝えられたのですが、スピース選手とリヴェスト選手はその順番の通りにサービスしてしまいました。しかもグラスでのサービスであるにもかかわらず、お客様にテイスティングまでしてもらっていました。グラスでのサービスの場合、テイスティングは必要ないように思ったのは僕だけでしょうか。

それと実際のサービスをする順番としては、一番ご年配でもあり、グラスに注がれてからの温度上昇を考えて一番温度を上げるべき1995年をサービスする左のお客様から始めるべきで、次に2002年の左のお客様、最後に2003年の真ん中のお客様にお注ぎするべきでした。この順番でサービスをしたのはバッソ選手のみでした。

ただお客様が注がれてからみんなで乾杯するかもしれないことを考えると、一人ひとりに抜栓してお注ぎするのではなく、すべてのボトルを先に抜栓しておいてからグラスにお注ぎするべきで、これをやったのはスピース選手だけでしたね。

次の課題は東京のガストロノミーのレストランで、20,000円のコースに5種類のワイン(合計いくらだったか聞き逃しました)をおすすめする、うち白ワインは2種類まで、というものでした。

皿数は口頭で説明されませんでしたが実は6皿あり、なのにおすすめするワインの数は5、というのがこの課題のトラップでした。

この課題では、みなさんわりと口調が早く、特にバッソ選手はほとんどマシンガン状態。いくら時間制限があるとはいえちょっとしゃべりすぎの感は否めず、詳しい説明で多面的なサジェスチョンとはいえエレガントな接客とは言えない気がしました(^^;

他国語(母国語ではない英語またはフランス語)で早口のため私は内容を良く聞き取れなかったのですが(^^;もしかするとリヴェスト選手は5種類のところを6種類おすすめしていたのではなかったでしょうか。スピース選手もデザートに何をおすすめしていたのかちょっと良くわからず。バッソ選手は、最後に最初に選んだシャンパーニュに戻るというところが、巧かった。

次の課題は8人のテーブルにシャトー ラ ガフリエール1985年物を6分でサービスするというもの。ご注文は24時間前にされていて、ボトルはご注文時にすでに2本立てて用意されていました。

そもそもサービス自体を終わらせることができたのはバッソ選手一人。シャンパーニュのサービスといい、仕事の速さと的確さはバッソ選手が抜きん出ているように感じました。スピース選手はサービスに入る前のご挨拶に時間をかけすぎましたね。あとスピース選手もリヴェスト選手もどのグラス、どのデキャンタを使うか選ぶのに迷ってしまっていました。それに2人は抜栓前にデキャンタを選んでしまっていたのに対し、バッソ選手は抜栓し試飲してからデキャンタを選んでいましたね。

当然といえば当然ですが本物の1985年物のコルクはかなり柔らかくなっていて、みなさん抜栓にはちょっと苦労されていました。リヴェスト選手はそのために開けるときにポンと音を立ててしまい謝っていました。みんなダブルアクションのソムリエナイフを使っていたのは、ちょっと意外でした。

実はこの課題でもトラップがひとつ。ホスト役のセルジュ・デュプスさん(1989年優勝者)が、ボトルのプレゼンの際にせっかく24時間前に立ててあったボトルを乱暴に手に取るというものでした。スピース選手とバッソ選手はこのことを気にも留めずに作業を進めてしまいました。リヴェスト選手は気づいたまでは良かったのですが、ホストの方にボトルの交換を話すことなく勝手にボトルを交換してしまい(ボトルは2本立てて用意されていました)、交換したあとにそのことを告げると、ホストを怒らせてしまうという失態を。やはり事前にやんわりとご説明して交換を勧める、という手順が必要でした。お客様を怒らせてしまったせいか、リヴェスト選手はその後のデキャンティングの前のテイスティングの手が震えてしまっていたのはちょっとかわいそうでしたが、実際のサービスの現場では良くないことですね。

次の課題はワインリストの間違い探し。


コンクールでは完全におなじみの課題で、各選手ちょこちょこ指摘忘れがありましたが、そもそも自分は知らないワインだらけ(^^;やっぱり決勝レベルはすごい!

次の課題は2つ続けてデギュスタシオン(テイスティング)。写真はその回答。

まずは写真下の4種類のワインを12分間でコメント。さきほどの赤ワインのサービスで失態をしてしまったリヴェスト選手でしたが、一口水を飲んでしっかり気を取り直すことができたのか、このデギュスタシオンでの説明の的確さは印象的でした。

誰もぴったり当てることはできませんでしたが、スピース選手の4番目のボーヌ 1級エイグロ2005年をシャンボール ミュジニィ1級2006年(始めは1999年といいましたが、あとで訂正)と言ったのが一番惜しかったところでしょうか。

あとリヴェスト選手は1番の白をシュナン ブランかも、と言ったのも惜しかった。最終的に彼女はニーダーエステライヒのグリューナー フェルトリーナー2009年と答えてしまいました。

それとスピース選手もリヴェスト選手も2番目のワインをアメリカのワインと答えていたのですが、もしかするとアメリカンオークの影響があったんでしょうか。スペインのモナストレルですからね。バッソ選手は受け狙いなのか1番の白を甲州と言ったり、説明は細かかった(マシンガントークww)のですが、回答は惜しいものはありませんでした(^^;

それを考えると、1995年田崎さんが優勝されたときの、確かリオハかなにかをヴィンテージまで当てられていたのは本当にすごかったなと、改めて思いました。

そして次のデギュスタシオンは6種類の飲み物を3分で当てなさい、というもの。

ここではスピース選手がピコンを、バッソ選手がキルシュをずばり当てました!リヴェスト選手も1番を「トマトの香りがするが、わからない…」と言っていたのが惜しかった!

そして最後の課題は、15枚のスライドに8秒ごとに映し出されるワイン関係者の名前を言いなさい、というもの。これは初の試みではなかったでしょうか。日本国内のコンクールではあったかな?スピース選手とリヴェスト選手はあまり当てることができませんでしたが、バッソ選手はかなりの方の名前を言い当てていました。さて、このイケメンは誰でしょう?ww

こうして進められた世界最優秀ソムリエコンクールの決勝、進行中の予想通り、バッソ選手の優勝となりました!バッソ選手は前回のチリ大会では準優勝、今回も優勝候補の筆頭格でしたので、順当と言えば順当な優勝でした。壇上に家族も呼んで喜ぶバッソ選手、とても嬉しそうでしたね♪

でも初の女性ファイナリストで準優勝となったリヴェスト選手の健闘も素晴らしかった。彼女に実際にサービスしてもらいたいと思われた方も多かったのではないでしょうか。3位となったスピース選手はまだまだ31歳。これからに期待できそうなソムリエです。

久しぶりのコンクール観戦。ソムリエとしてのサービスの現場から5年も離れてしまっている自分ですが、いろいろな感覚が呼び戻された、そんな観戦となりました。やっぱり観に行って良かった!今はネットショップですので実際の接客はほとんどありませんが、マリアージュのおすすめやクレーム処理など、参考になることが山ほどありました。こういうの、やっぱりとても大事だと思います。

1995年の東京大会観戦時は、私はまだソムリエにもなっておらず、たった一人で田崎さん優勝の喜びをどうしようかと悶々としておりましたがww、今回は五味さん夫婦と同席させていただき、とても楽しく観戦させていただくことができました。ありがとうございました!